希望の塔は崩れ
魔の国からの門は開かれた

異形の獣が生まれいで
狂える月が空を彩る
世界の半分は魔の領域となった

月と戦う刃を得た子は
この世を闇に沈ませまいと夜を駆る

ふいに 誰かが言った
闇と共存できるのに
なにゆえお前は狩り続けるのか、と

――俺がまだ、人だからだよ。――








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 紅の髪をした少女が、街道をかけていた。
 目深に被った帽子には、黒い小さな角飾りが付いている。
「すっごーい。人がいっぱい。ねぇ、あれなに」
 あまりにはしゃぐ少女の姿に、通りを歩く人が苦笑して、顔をほころばせた。
「こら、メー。走るな、人にぶつかるだろうが」
 褐色の肌をした人族の少年が、そんな少女に声をかけた。
 えへへ〜と笑いながら、少女は少年の脇に戻ると、その腕をとった。
「ねぇ、イズル。イズルの弟って、どんな人。私と同い年くらい?」
 イズルはぽりぽりと頬を掻いた。
「すぐにわかるよ」




<おわり>





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