01-絵梨夏(えりか)


「"我らの過去を知れ"と。それが兄の風牙に託された言葉です。青風様」
 絵里香は新しい王に伝えると、いぶかしむ王を残して退室した。
 絵里香は沈痛な面もちで扉を振り返った。

――――『風牙(未公開)』より


[MAR 10,2004]




02-赤髭の娘


古の巫女の血を受け継ぐ娘。
老若の民の女子は名を持たない。
○○の妻や娘、ってのが主流。

王の座をついだら、赤の名を貰えるのだけども…。


[MAR 11,2004]




03-黒と青


「少し話をしませんか? 秋月殿」
 活国の王、正治の民の青風は杯を掲げて、会場に唯一いる英知の民である秋月に声をかけた。
 偉丈夫の青風は秋月より頭二つ分ほど背が高かった。
「ここの主役は、黄の国の王ですよ。青風殿」
 嫌味のこもった声で、秋月は青風の名を呼んだ。
「しかし、今主役の姿はお見えにならない…それなら次の主役は貴方、違いますかな? 緑の王を倒した若い王子よ」
 何処か甘い声で青風は告げた。

――――『第ニ話 続きの白』より


[MAR 13,2004]




05-会話筒抜け


 ドアがノックされ、
「青風様。お話の所申し訳ありません」
 絵梨夏は戸の向こうから声をかけた。
 入るように青風が促す。
「船籍不明の艦が一隻こちらに近づいています」
 絵梨夏は秋月をちらっと目を向ける。
「帆のない船、そして速度から零国の船と思われます。いかがいたしましょう」

――――『第五話 活は人を動かし』より


[MAY 1,2004]




06-漁村にて


 名を呼ばれて、秋月は海の方をみた。
 波間で褐色の肌をした娘が秋月に向かって手を降っていた。
 秋月もそっと手を降り返す。
 彼女が海をだたよっていた秋月を見つけてくれなければ、自分は二度と大地に足を立てなかったかもしれない。
「……感謝しているのだけどね」
 娘が岸の方に泳いで来るので、秋月も浜辺に降りた。
 膝までまだ海に入ったままで、娘は拳大(こぶしだい)の貝が大量に入った網カゴを得意げに見せる。
「今日はいつもよりよく潜れたの」

――――『第六話 大地は緑を芽吹かせ』より


[MAR 12,2004]




07-反省の色なし


「自分で言うのも何だが、独身のいい男が一人ここに――――」
「それ以上言葉を続けたら、もう一度蹴飛ばしてやる」
 何処を、とは言わないが、秋月はドスの聞いた声で言った。
 青風は咳払いをし、絵里夏はそんな青風に少しあきれている様だった。

――――『第七話 屍は黄金を求め』より


[MAY 14,2004]




08-世界を重ねる者


 両腕を広げ、とても嬉しそうに少年は言った。
「でも良いよね? だって君はもう、国には戻らないんだもの」

――――『第八話 全ては零(ぜろ)へ』より


[MAY 16,2004]




09-安らぎの


 イサンテの声はとても穏やかで、言葉がわからなくても彼の安らぎが秋月に伝わってくる。
 秋月は声をかけようかしばらく躊躇ってから、彼に背を向けた。

――――『第八話 全ては零(ぜろ)へ』より


[JUN 26,2004]




10-怒らせたね?


「秋月っ! 城ごと消し去ってしまえ! この世に王族など不要。王は君ひとりだ!」
 イサンテの怒りと殺意に飲まれ、秋月の口から呪文が流れる。
 この世界の全ての魔力がただ一人の手のうちに集まろうとして、大気が揺らいだ。

――――『第九話 終月(しゅうげつ)』より


[JUL 16,2004]




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