零国の王城では、多くの使用人が料理や食器を運んでいた。
 首周りの空いたドレスを来た令嬢が、使用人に声をかけた。
「ご苦労様。……母が何処に居るか、知らないかな」
 声に合わせて、肩の辺りを黒い髪がゆれる。
「白虎様といらっしゃるのを、中庭の方で見かけましたが……お呼びしましょうか?」
「いや、邪魔をしたら二人から恨まれそうだから止めておくよ」
 冗談めいた口調で、秋月は微笑んだ。

エピローグ

 秋月は次に絵里夏の姿を探した。
 人混みから何とか見つけて、声をかけようと近寄るとすでに先客が居た。
 赤毛に褐色肌の少年で、老若の民から選ばれた幼い王だった。
「絵里夏、絵里夏。また魔物の城の話をしてよ」
「またですか?」
「うんっ」
 しょうがないですねぇ、と絵里夏は椅子のある壁際へと幼い王を誘った。
 まったく子供はいつも行動が早い、と秋月がぶーたれているとその肩を叩かれた。
「探したぞ。秋月」
 言いながら青風は、叩いた肩へと視線を落とした。
 そこには自分が斬った跡が残っていた。
 秋月は、もう隠すのはあきたよ、と傷跡を平然とさらけ出していた。
 二人で外に出る。 
 秋月は零れた髪を耳にかけながら、やっぱり短く切ってしまおうかと呟いた。
 勿体ないっと青風が慌てて止める。
 そんな風に慌てる青風が可笑しくて、秋月が笑った。
 秋月は城壁に腕を置いて、空を見上げた。
 透き通った青い空は、今日も皆を見守っていた。
「何故、白虎を止めた?」
 背中から声をかけられ、秋月は首を下ろした。
「さぁ、なんでかな。ただ、命を奪っても良くはならない気がしたからかな」
 こんな言葉が自分の口からでるのだと、言いながら秋月は驚いていた。
「……そう言えば、遺跡に行けば活国をくれるって話はどうなったんだ?」
 ふと秋月は思い出して聞いた。
 あの後、事後処理でばたばたしていてすっかり忘れていた。
 青風は苦笑いをした。
「いやぁ。青の民の頃なら皆も従ったんだが……最近、あれやこれや皆口うるさくてな」
 そう青風は嬉しそうに言った。
「だがな。皆も納得する良い手があるぞ」
「へぇ?」
 青風が囁いた。

「今度は蹴飛ばさんでくれよ」

 

 

 

終わり

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