第七夜 そして・・・




 かつて、ドームと呼ばれる施設が人間たちの手で生み出された。
 数々の奇跡の技を来世に伝えるため、ごく少数の選ばれた人間たちが暮らす都市。
 しかし、数千年と経た今その正確な所在を知るものはいなくなり、ドームは童話になった。

 でも僕らは知っている。確かにドームは存在し、そして永久を生きた種族が居たことを。


〜エピローグ〜

 血にまみれた兄がどうやって生還したのか、弟は知らない。
 わかったのは、その瞳に以前と違う凄みが増したことだけ。
 強い妖気に長い間あてられたせいで、兄は人族でありながら成体になることはなかった。


 満月が昇る。月に狂ったモノがうごめく時間。
 蒼い炎が、またひとつ闇の者を切裂いた。
「兄さん。働きすぎは、体に悪いよ」
 心配する声をよそに、炎が踊る。
 その度に、ひとり、またひとりと灰になる。
 彼女と同じように。
「わりぃな。お前はまだ奴らのリストに載ってないんだから、手を引いていいんだぜ?」
 いつの日かこの魔剣は、俺の手を離れてしまうだろう。
 マーチェントを裏切ったように。
 セクトはため息をつくと、
「兄さんが、自分をコントロールできるようになったらね。それまでは、危なっかしくて見てられないよ」
 笑いながら言ってのけた。
 あの仕事を受けてから、兄は変わってしまった。
 そして、自分は何の助けもあの時できなかった。
 それが、吸血鬼がからむ任務ばかりを受けるようになった兄についていく理由。
 兄は知っているのだ。
 自分が無謀ゆえに強いのだと。
 僕以外の誰が、この兄についていけるだろう。
「……兄さん、ひとつ面白い話を耳にしたんだ。"門(ゲート)"を守るのが、吸血鬼どもだって話、信じられる?」
「信じるさ。吸血鬼どもを生み出したのが、門ってのならな。そして、門のある希望の塔への鍵は、俺が持ってる…だろ?」
「ふふっ、言うと思った。付き合うよ。監察官の奴も巻き込んで、さ」
 狂った月は神々しく闇を照らす。
 その闇に生まれた新たな蒼い炎の使い手の旅は、こうして始まったのだ。


><><><><

希望の搭は崩れ
魔の国からの門は開かれた

月は悪意に汚れ
夜は狂気に彩られる

世界の半分は魔の領域となった
月に魅入られし子らは
夜と共に永劫の時を彷徨うだろう


ふいに 誰かが言った
奴らを倒せるのなら
俺は人でなくなってもかまわない、と

かくて門は閉ざされ
全ての子らに安息の夜が来た

しかし 人で無くなった子は
手にした刃を捨てきれず

いつしか闇に焦がれた


.......FINE

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