-2003.12.28- 紅 作

狂気の女神




 月は時に、女神と形容される。そして、ある世界では狂気という意味を孕んでいる事を、若者は知らなかった。

 野営の準備を始める若者の背後から風が駆け抜けた。
 今まで、吹く事のなかった風が。
 かえりみる。
「ねぇ、こんな時間にどうしたの?」
 くすくすと笑う少女の声。
 紫色の長い髪は風を受けて柔らかに舞う。
 月光を受けて輝くかのような白い肌。対照的な闇色の黒い衣装。
 そして。
 髪と同じ色の瞳は優しげな笑みの奥に深い暗さを見せるかのようで。
「君こそ、どうしたんだい? 女の子が一人で出歩くような場所と時間じゃないだろう?」
 それには応えない少女はただ、くすくすと笑っていた。
 若者はある事に気付いた。風は、少女から吹いているように見える。
 突風。
 若者は枯葉のように吹き飛ばされ、木の幹に激突する。
 彼は、月が狂気という別名を持つ事を知らなかったが、わかっている事が一つだけあった。
「女とは、怖いものだ」
 女神が夜を見守る頃。
 若者の意識は暗転した。

「もう終わりなの? なぁんだ、見た目よりヤワなのね」
 くすくすと。風の止んだ森には静かな笑い声だけが吸い込まれていった。

 

あなたは、しばらく家畜として飼われたのち、
ニ・三度目で完全に吸い尽くされます。
ごちそうさまでした。


……っという訳で、まさか文章で餌が届くとは〜(笑)
ありがとうございます、毎度お世話にw
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Incunabula

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